子どもたちの未来 あたりまえの日常
認めよ!避難の権利
東京電力福島第一原発事故により兵庫県へ避難した方々の一部が、原発賠償訴訟の原告として立ち上がりました。
裁判をするという選択は、たいへん勇気のいることです。
しかも、全員が、それまでごく普通の暮らしをしていた方々。
あたりまえの日常を取り戻し、子どもに安心できる未来を確保するために、裁判を通じて社会に訴える方法を選びました。
この原告となった避難者の方々を、支え、応援するために、みなさんのお力を末永くお貸しください。
※このページの写真は”希望”を花言葉にするガーベラです。 「希望をこの手で守る」というメッセージを大切にしていきたいと思います。
2024年3月21日
原発賠償ひょうご訴訟神戸地裁判決に対する声明
原発事故被災者支援兵庫弁護団
1 はじめに
神戸地方裁判所(第2民事部、龍見昇裁判長)は、福島原発事故によって兵庫県内への避難を余儀なくされた被害者30世帯78名が、国及び東京電力ホールディングス株式会社(以下「東京電力」という。)を被告として、約6億9100万円の損害賠償を請求している訴訟について、第1次提訴をした令和25年9月30日から約10年半が経過した本日、東京電力のみに対して法的責任を認め、2424万0823円の賠償を命じる判決を言い渡した(以下「本判決」という。)。
最高裁の不当判決を盲目的に追随するコピペ判決であるだけでなく、数々の看過できない問題点を残した極めて不当な判決である。ついては、弁護団として、以下のとおり声明を発する。
2 国の責任について
福島原発事故を発生させた国の責任については、最高裁判所第2小法廷が令和4年6月17日に先行する同種訴訟における国の責任を否定する不当判決を言い渡した。それ以降、この最高裁判決に無批判に追随する判決が相次いでいた。本判決は、同種訴訟の中でも、この最高裁判決の後も尋問等の実質審理が行われ、その上で第1審判決が言い渡される全国ではじめての判決であり、国の法的責任をどのように判断するかが注目されていた。
本判決は、阪神・淡路大震災を受けて国が精力的に行った長期評価の信用性を認めず、結果可能性について最高裁の不当判決を丸々コピーしたような論理で否定し、国の不作為を不問に付した。最高裁判決には、研究者等からも厳しい批判が寄せられ、歴史に評価を委ねる価値さえ疑問とされている。端的に言えば、どうせ事故は防げなかったのだから、対策をする必要も無かったという、非常識極まる論理であった。この内容をそのまま引き写したような本判決は裁判官の独立を自ら損ない、人権の砦となる司法の役割を放棄するものであり極めて不当というほかない。
3 避難の相当性について
本訴訟の原告の多くは区域外からの避難者であり、避難をした相当性のみならず避難を継続する相当性が一つの重要争点になっている。原告らは、放射線被ばくによる健康への侵害の危険性を訴え、とりわけ「内部被ばく」の危険性について詳細な主張立証を尽くしてきた。
しかるに、本判決は、こうした原告らの訴えの内容を正確に理解することなく、(内部)被ばくを避けるための避難の相当性を否定した。人権の危機に瀕している原告らを見捨てるに等しいもので、約10年にわたる審理が何であったのか不条理さえ感じるところである。
いずれにしても、避難の相当性について更なる検討が尽くされるべきであり、上訴審において審理を尽くす必要があることが明らかになったといえる。
4 損害について
本訴訟では、被害者への完全賠償を目標に掲げ、福島県から遠く兵庫県まで避難し、あるいは家族分離を余儀なくされるなど様々な困難を、被害者一人ひとりに寄り添って具体的に整理し、各自の損害を請求していた。
しかし、本判決で認容された損害額は、原告らが背負った困難との落差があまりに大きく、適正な評価とは言い難く、一人ひとりの原告の個々の実情については十分な考慮がなされているとは言えない。裁判所が被害者の置かれた実情への理解が不十分であると言わざるを得ず、さらに判決を精査した上で、被害者に寄り添った認定を求めていきたい。
5 最高裁の不当判決と今後の目標
最高裁判所第2小法廷の令和4年6月17日判決は、国策に追随する判断であり、判決の内容・論理には多数の批判が寄せられ、歴史的評価に耐えない判決と評されている。何よりも、最高裁判事4名のうち多数意見の3名については、東京電力と深い関係を持つ法律事務所と関わりがあった人物であり、司法に帯する国民の信頼をも揺るがしている。このような不当判決や多数意見をコピペするような本件判決には、激しい憤りを覚える。
私たちは、本件訴訟を提起したときに掲げた5つの目的(①国の法的責任、②完全賠償、③恒久補償制度、④被ばくから避難する権利、⑤事実解明と再発防止)を改めて胸に刻み、総力を挙げて本判決の誤りを正し、被害者に寄り添った法的支援を実践していく所存である。
原発賠償ひょうご訴訟神戸地裁判決に対する声明
原発事故被災者支援兵庫弁護団
1 はじめに
神戸地方裁判所(第2民事部、龍見昇裁判長)は、福島原発事故によって兵庫県内への避難を余儀なくされた被害者30世帯78名が、国及び東京電力ホールディングス株式会社(以下「東京電力」という。)を被告として、約6億9100万円の損害賠償を請求している訴訟について、第1次提訴をした令和25年9月30日から約10年半が経過した本日、東京電力のみに対して法的責任を認め、2424万0823円の賠償を命じる判決を言い渡した(以下「本判決」という。)。
最高裁の不当判決を盲目的に追随するコピペ判決であるだけでなく、数々の看過できない問題点を残した極めて不当な判決である。ついては、弁護団として、以下のとおり声明を発する。
2 国の責任について
福島原発事故を発生させた国の責任については、最高裁判所第2小法廷が令和4年6月17日に先行する同種訴訟における国の責任を否定する不当判決を言い渡した。それ以降、この最高裁判決に無批判に追随する判決が相次いでいた。本判決は、同種訴訟の中でも、この最高裁判決の後も尋問等の実質審理が行われ、その上で第1審判決が言い渡される全国ではじめての判決であり、国の法的責任をどのように判断するかが注目されていた。
本判決は、阪神・淡路大震災を受けて国が精力的に行った長期評価の信用性を認めず、結果可能性について最高裁の不当判決を丸々コピーしたような論理で否定し、国の不作為を不問に付した。最高裁判決には、研究者等からも厳しい批判が寄せられ、歴史に評価を委ねる価値さえ疑問とされている。端的に言えば、どうせ事故は防げなかったのだから、対策をする必要も無かったという、非常識極まる論理であった。この内容をそのまま引き写したような本判決は裁判官の独立を自ら損ない、人権の砦となる司法の役割を放棄するものであり極めて不当というほかない。
3 避難の相当性について
本訴訟の原告の多くは区域外からの避難者であり、避難をした相当性のみならず避難を継続する相当性が一つの重要争点になっている。原告らは、放射線被ばくによる健康への侵害の危険性を訴え、とりわけ「内部被ばく」の危険性について詳細な主張立証を尽くしてきた。
しかるに、本判決は、こうした原告らの訴えの内容を正確に理解することなく、(内部)被ばくを避けるための避難の相当性を否定した。人権の危機に瀕している原告らを見捨てるに等しいもので、約10年にわたる審理が何であったのか不条理さえ感じるところである。
いずれにしても、避難の相当性について更なる検討が尽くされるべきであり、上訴審において審理を尽くす必要があることが明らかになったといえる。
4 損害について
本訴訟では、被害者への完全賠償を目標に掲げ、福島県から遠く兵庫県まで避難し、あるいは家族分離を余儀なくされるなど様々な困難を、被害者一人ひとりに寄り添って具体的に整理し、各自の損害を請求していた。
しかし、本判決で認容された損害額は、原告らが背負った困難との落差があまりに大きく、適正な評価とは言い難く、一人ひとりの原告の個々の実情については十分な考慮がなされているとは言えない。裁判所が被害者の置かれた実情への理解が不十分であると言わざるを得ず、さらに判決を精査した上で、被害者に寄り添った認定を求めていきたい。
5 最高裁の不当判決と今後の目標
最高裁判所第2小法廷の令和4年6月17日判決は、国策に追随する判断であり、判決の内容・論理には多数の批判が寄せられ、歴史的評価に耐えない判決と評されている。何よりも、最高裁判事4名のうち多数意見の3名については、東京電力と深い関係を持つ法律事務所と関わりがあった人物であり、司法に帯する国民の信頼をも揺るがしている。このような不当判決や多数意見をコピペするような本件判決には、激しい憤りを覚える。
私たちは、本件訴訟を提起したときに掲げた5つの目的(①国の法的責任、②完全賠償、③恒久補償制度、④被ばくから避難する権利、⑤事実解明と再発防止)を改めて胸に刻み、総力を挙げて本判決の誤りを正し、被害者に寄り添った法的支援を実践していく所存である。
声明文_原発事故被災者支援兵庫弁護団_20240321.pdf | |
File Size: | 150 kb |
File Type: |